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初恋と"強すぎる女性"への執着と十二国記

事の始まりは十二国記の再読で、その1巻である「月の影 影の海(上)」を昨日読み終えた。

「月の影 影の海(上)」は十二国記の中でたぶん2番目くらいに好きな話で、今回の記事用に有り得ないくらい短くしたあらすじは以下の通り。

・15秒で分かる「月の影 影の海(上)」

現実世界では八方美人品行方正で通っていた女子高生中嶋陽子は、突如現れた男に意味不明な事を言われ異世界に連れて行かれそうになる。

訳が分からない陽子は現実世界に残ろうと出来る限りの抵抗をするが、結局化け物が自分を追ってきたりする事もあって異世界に着いてしまう。

陽子が駄々こねたせいで上手く着地出来ず、よく分からん田舎の山道で1人になってしまう。

凄い頻度で化物襲ってくるわ、向こうの世界から来た奴は政府に突き出す事になってるから人間にも凄い騙されるわ襲われるわで大変な事になる。

それを非力な女子高生の陽子が切り抜けられたのは、突然現れた男に渡されていた、化け物もズバズバ斬れて陽子にしか抜けない宝剣と、握ると凄い回復する珠のおかげだった。

しかし、必死に生き延びる中で帰りたいけどもう元の世界に帰れない事が次第に分かり、これ頑張って生きる意味ある?という思いが強くなる。

追い打ちをかけるように宝剣が光り現実世界の様子が映し出され、誰にでもいい顔をする陽子が嫌いだったと言う友達、何かそんな感じの事を言う教師、最後の望みだった母親も、確かに陽子は素直過ぎたし子供の考えてる事なんて分からないね、と納得してしまう場面が映し出される。

生まれて初めて真の孤独と向き合わざるを得なくなり、あまりに心許ないが最後の手がかりである剣と珠を頼りに…というところで毎日の襲撃と精神的負担で体力も気力も限界が来て道端に倒れる。

という所で上巻は終わる。

ちなみに陽子は異世界の一国の王で、あんまり弱くてわがまま言うもんだから連れに来た側近の謎の男の力でもちゃんと連れて来れなかった、というのがこの話のオチである。

陽子は元々超が付くほど弱くて甘い、最終的に王になるが謎の男含め誰も助けてくれない話である、というのが伝わればOK

十二国記ファンに読まれたら怒られそうなあらすじだが、今回はこの話を通じて自分が何を思ったのかという方がメインなので目をつぶる。

・小学校3年生の頃

算数の授業で確か筆算を習ってた時に、どうやって解きますかという質問に自分は手を挙げ、敢えて正攻法ではない少しひねた解法を答えた。

教室がワーッとはならなかったけど、先生は「ひふみくんらしい良い回答ですね!」みたいな事を言ってくれたので、かなり喜んだ(どのような小学生だったかを察せる回)

が、隣の席のAさん(♀)が「そんなんじゃ誰も分からないし意味ないでしょ」とボソッと言ったのだ。

当時はその真意(みんなで受ける授業なのでこれから習う正攻法を答えるか、手を挙げなければ良い)は分かりかねたが、"Aさんには解法が分かるだけでなく、目立ちたい故に敢えてひねた答えを出した事を見抜かれている"という事だけは分かった。

Aさんは小3~小6まで同じクラスで、勉強出来る、足が速い、背が高い、何か小さい字の本が好き、水泳が出来る(同じ水泳教室に通っていた。足が速い奴にも水泳でなら大抵勝てたのでアイデンティティとして重要だった)と、

小学生基準では破格のスペックを誇っており、正確には初恋ではないが、初恋と言っていい強烈な憧れを持っていた。ちなみに自分の足と背と読んでいた本は平均と平均と平均という感じである。

クラス内で勉強はAさんとBさん(両方女性)が1,2番で、自分ともう1人が3,4番という感じで、そのBさんは顔が抜群に良いし優しいし絵に描いたような良家のお嬢さんという感じで、モテる子=Bさんみたいな認識がクラスにはあった。実際2年生くらいまでBさんばかり見ていた。

目立ちたがった自分を咎めてボソッと言うAさんが万人にモテるタイプではないのは明らかだが、前述のような事とか色々あってAさんが好きになった。

・小4、事件発生

何かのお祝いの会をする時に、自分とAさん含む4人で装飾班みたいなのになって、ふわふわの紙を重ねて花を作る仕事と、何かもう1つ仕事があった。それでちょうど男女2:2で分けるような流れになった時にどっかのタイミングで自分が「花作りは女の仕事だ」と言った。

これは何度も思い出してるので一字一句間違ってない。確かに自分はこう言った。大人になった今読むと物凄い発言だが、小学生だし男女に分かれてやるのが普通でしょ以上の意図は一切なかった。

そこでAさんが「それ意味分かんなくない?」的な事を言って言い合いになった。自分は怒られる意味が分からなかったので弁明してみた気がするが、解決しなかったのでAさんが先生に言いに行ってその場は収束した。

その後ひと段落してから席で立たされ、Aさんの糾弾と先生からの説教を受けた。怒られる側で糾弾というのもあれだが、クラス内で立たせて怒るというのはなかなか小学生には堪えるので糾弾で概ね間違っていないだろう。

何故この事を何度も思い出していたかと言うと、人並みに怒られ慣れてはいたけれど、相手が怒っている度合いと、自分の悪い事をしたという実感がこんなにも噛み合わなかった事が他になかったからだ。

先生の説教も正直よく分からなかったので全く内容を覚えていない。

小4の自分には(というか暫くの間)性差による侮辱という感覚は分からなかったけれど、この事件は自分に結構深い爪痕を残した。

と他にも色んな事があったけど、Aさんに関して特に深く印象に残っているのはこの2つの出来事だ。

・小5、再び事件発生

結論から言うと自分はいじめの加害者になった事がある。そこまで凄惨な話ではないつもりだが、いじめに程度もクソもないので字を見るのも嫌な人は次の項まで飛ばして頂いて構わない。

所謂どんくさい女の子(Cさん)がクラスにいて、その子に悪口を言うのがクラスで流行っていた。自分はその中でも多分上位3,4人の主犯格だった。

ある日、Cさんが限界を超えて泣き出し先生に言いに行く、という事が起こる。この時最後の引き金となる言葉を言ったのは自分である。日常と化していたので何と言ったかは覚えていない。

これは一度ツイッターに書いた事があるが、自分が1人で先生に呼ばれた時に確か悪口を言ってたのは自分だけじゃない的な事を言ったのをはっきり覚えている。その後Cさんは誰にいじめられていたのかという質問に「みんな」としか答えなかったらしい。

次のホームルームで先生が全員の前で「ひふみくん他に誰が悪口を言っていたのか言ってみんなで謝りなさい」と言った。今思うと信じられない事をする先生だが、それは本題ではない。

自分はかなり反省していて他の事を考えられる状態ではないし、先生の言う通りにみんなで謝るのが最優先だったので、結構な人数の名前を言った。

これも別に自分がこれで傷ついたとか裏切る事を知ったとかそういうのは一切なくて、ただ自分は申し訳ないと思っていたので出来る限りの事をしたとしか思っておらず、正直あまり覚えてない。

一応それで悪口はぱったりと止み、クラスの雰囲気は表面上はそれまでに戻り、Cさんだけに傷が残され、その後何かぶり返す的な事はなかった。

・小学卒業から中高くらいまで

Aさんは4年間ずっと"何でも出来て、自分の意見があり、派閥にあまり迎合しない人"として自分に深く印象を残し、Aさんの私立中への進学を以てお別れになった。

自分は公立中に進み、隣の小学校から結構えげつない不良が流入してきて、スクールカースト色の濃い3年間になった。とは言えカースト的に見れば多分並み的なポジションで3年間を過ごした。

中学受験でフィルタリングされたせいか、自分の強烈過ぎる原体験のせいか、Aさんのような人は男女含めておらず、中学時代に好きな人と言うと思春期なのでいない事はないが、Aさんより記憶が格段に薄い。

ちなみに中学では卓球をしていて、地区大会を優勝するが都大会では全く通用しないという井の中の蛙スタイルを地で行っていた。あまり今回の話に関係ないが、人に勝つ快感と負ける悔しさはこの時期に培われたものが大きい。

小5キモエピソードを追加しておくと、小学校の頃からある程度卓球が強かったのでAさんもそれを知っており、一緒に遊んだ事が何回かあってそこは認めてもらえていたというのがある。もう書いていて死にそうだ。

ついでに、学年のやばい奴が一番の友達をからかっていたので、何故か正義感が発動してそいつにやめろよ的な事を言うけど強めのビンタ一発で退散した(何かなあなあになってからかいは収まったが…)という面白過ぎるオタクエピソードもある。

高校はバリバリの進学校で、卓球や勉強含めあらゆる面で周りに劣る事になる。とは言っても姑息な逆張りオタクだったのでそれを悲観した事は殆どないし今もないが…

ちなみにそこで唯一周りに勝てたのがゲーセンのゲーム全般だ。

・オタク醸成期。"強すぎる女性"への執着。

高校、大学で一気にオタク化が進む。そこで土台となったのは強すぎるAさんと、いじめの記憶。と、他にも色々あるが取り敢えず2つにしておく。

自分の意見を持ち、派閥に迎合してはならないという観念(Aさんだけの影響ではないが大きいのは間違いない)、またいじめ事件で自分がした事(結果には現れなかったとは言え友達を売ったという思いがかなり大きくなった)、「花作りは女の仕事だ」と言った事への罪の意識(当然だがもう遡って謝る方法はないため背負うしかない)が、無意識に自分の方向性を決めていた。難しい言葉で言うと内在化されていた。

ちなみにAさんは風の噂では凄い女子大に入ったところまでは聞いた。まあそうだろう。

・どのような無意識が生まれていたか

端的に言うと"強すぎる女性に許されたい"という贖罪のような無意識だと思う。

これは自分のオタク的な好みにバリバリ現れていて、最近の自分の悩みにもばっちりとハマる。やっぱり思春期の経験は大切なのだ。

というところでようやくオタクコンテンツの話になる。

・飽きっぽい自分が10数年追い続けている妖精帝國

本当に飽きっぽくて色々な事に興味が移ってしまうのだが、妖精帝國だけは高校生の頃から唯一生き残っている。上の自己分析があればそれも自明のようなものだが、妖精帝國の歌や語りから、

Voのゆい様がキャラクターとして絶対に何者にも屈しない強い女性のシンボルとしてある(憧れの強すぎる女性像)

自分と徹底的に向き合わないと思想は生まれないという信念(罪の意識を背負う事)

徹底して反骨を歌っている(自分の意見を持つ事、人と違う事への執着)

妖精界から人間界にやってきて人間に語りかけている、という設定(憧れの対象が喪失している事への埋め合わせ、弱者である自分を認め教唆してくれる存在)

ゴスを基調としたビジュアル、メタルサウンド(中二病全盛期のオタク)

と言うような自分に刺さるしかないような要素が山盛りなのだ。そりゃ気付いたらファン続けてるわという感じだ。

・女の子が痛い目に遭う作品

ここ数年何故これが好きなのか説明しあぐねていたが、今回はついに完成した。

「Aさんへの嫉妬」と「自分の断罪」がごちゃ混ぜになって出てきている。

「Aさんへの嫉妬」は分かりやすい。何でそんないつも涼しい顔して凄いの?なんなの?流石に死ぬのは怖いでしょ?みたいなオタクが培養されて出てきたみたいな思考だ。めちゃめちゃ強い絶対に心が折れない女の子が死の恐怖で仮面が剥がれるタイプの作品が挙げられる。

「自分の断罪」というのは、酷い事をしたら仕返しをされるし、それは口で反省して済むものではないぞ(自分が口で反省しても効果がないタイプかつ、死ぬのが凄く怖いタイプのため)という無意識の現れで、要するにこの時自分は被虐者側だ。復讐されるタイプの作品が挙げられる。

グロが好きなわけでは決してないという説明がすんなり済む。

・オタク界では一般的な、美少女への執着としばしば噛み合わない

これはかなり言いたかった事で、オタクは美少女が好きなのは間違いないし自分も相当好きなのでオタクだな~と思っていたのだが、何かと作品に違和感がある事が多い。

特に強いヒロインが空から降ってきて少年を助ける物語とか、強い女的なシンボルの女傑がぶんぶんする物語とか…言うまでもないがヒロインが主人公の男に惚れる物語は問題外である。

前者は確かに強い部分があるにはあるんだけど、基本的に何か弱い部分が描かれているところにあまり魅力を感じない。

後者はぴったりハマる可能性を秘めているが、何かしらの隙がある(無限にいる。)、男性優位社会のカウンターとして強い女性に設定されているだけ(ex.ムーラン)、強い女性にも母性はある(ex.ハマーン・カーン)など、惜しくも自分が求める事と噛み合わない例があまりにも多い。

・つまり、自分の罪を許し背中を押してくれるヒーローが見たい

最大の問題はそれが女性でなくてはいけない事だ。強すぎる女性が登場する作品は数多くあるが、上記の問題に引っ掛かる事が多いし、何よりそういった完全な憧れとして存在し、なおかつ弱者に手を差し伸べ許してくれるヒーローというのは男が多い。

好きな他の作品にもこの傾向は現れまくってて本当にキモい(ex.サンホラはクロセカが好き、最近面白かった映画は響-HIBIKI-…など)

・ようやく十二国記に戻ります。

という以上のような理解が、13歳の時(何も分からない)、19歳の時(自分の執着しているものなどは分かっているが何も繋がっていない)、今(今。)と3回十二国記を再読する事で繋がりました。ありがとう十二国記聖書。ほんまそれ。

もう忘れてしまったと思うが、冒頭で紹介した中嶋陽子は全く自分の意見を持たない弱い女性(最悪の存在で、強くない自分(ひふみ)を誇張した存在でもある)から、計り知れない孤独を経験し自分と向き合う事を通じて超強い女性になり、国を治める王(民を導く立場)になる。

十二国記は小説としての完成度もめちゃくちゃ高くて面白いため、それにこのような自己投影が重なれば忘れられない作品なのも当然である。

ちなみに一番好きなキャラは陽子ではなく、図南の翼の主人公である供王 珠晶なのは言うまでもない。

1行で言うと、豪族に生まれ、荒廃した国を憂い、弱冠12歳にして自分こそが王にふさわしいと言ってのけ、各国の偉丈夫が集まる難関を突破し、実際に素晴らしい王になるキャラである。これに嫉妬するもう1人のキャラとの話が本当に素晴らしい。しにたい。

・ご応募お待ちしております

そういった、ハマーン様でも足りないくらい本当に強い女性のヒーローの面白いお話に心当たりがありましたら是非お教えください。

・最後に

カッコいい自分語りをする人ってみんなキモエピソードを持ってて凄いな、羨ましいなと本気で思ってたけど、思春期に10年近く好きだった初恋の女の子が20年くらい自分の心と趣味までもを支配しているって書くと紛れもない激キモ・サピエンスそのもので、自分もそんなエピソードを持っている事が分かり、これで心おきなくキモ・オタクが名乗れるので本当に満足しています。ありがとう十二国記